創業明治三十九年 仁生堂薬局
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東京薬草散歩

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2016-06-01

第16回 皐月の薬草園振り返り

ご無沙汰しておりました。
5月中にアップのつもりが6月にずれこみ、申し訳ございません。

先月5月の薬用植物園は、ケシ(ソムニフェルム種)をはじめ、貴重な花がさまざまに咲いた1か月でした。
そんなわけで、百花咲き溢れた1か月を振り返り、薬草の花をご紹介したいと思います。

最初に、こちらのお花をご紹介いたします。

ケシ(栽培禁止)

こちらはケシ(ケシ科)の花です。あへんげし、オピウムポピーなどとも呼ばれますね。
観賞用のヒナゲシの倍くらいある、薄紙細工のような花と、大柄で無毛、青白い茎と葉が印象的です。

学名はPapaver somniferum(パパヴェル・ソムニフェルム)といい、そこからソムニフェルム種という呼び方もなされます。
ケシは、厚生労働大臣から特別の許可を受けた者でなければ、栽培してはいけない植物です。
現在、日本国内では、その許可を受けた数箇所で、研究用に栽培されています。栽培施設は厳重に柵で囲まれています。
その中でも、誰でも、予約なしですぐ近くからケシの花を見ることのできる施設は非常に限られています。
本州ではここ東京都薬用植物園だけではないでしょうか。
牧野植物園(高知県)が、最近ケシの栽培と公開を始めたと伺っております。

ケシの未熟果実を刃物で浅く傷つけると出る乳液を乾燥したものが「生あへん」であり、モルヒネを含んでいます。
モルヒネおよびその関連化合物は緩和医療において重要や役割を果たす医薬です。
一方では習慣性のある麻薬として、法で規制されていることは周知の通りです。動物の神経系に強く作用する物質を植物が生合成しているという自然界の不思議を常々感じます。

モルヒネから化学的に誘導して合成されるジヒドロコデインは、中枢抑制作用により咳を鎮める作用があり、市販の総合感冒薬などに多く用いられています。

写真の白いケシは、かつて日本であへんの採取用として育種された品種です。戦前・戦中にはケシの栽培が奨励された時代もありました。(繰り返しになりますが、いまは栽培禁止です。)
このほか、インドやトルコなどであへん用に栽培される紫色の花の品種や、欧米で園芸用(国によっては、観賞用としての栽培を合法とするところもある)として育種された赤や桃色など各色のケシが存在します。

このように、薬用植物のなかでも、園芸植物にもなりうるようなものがいくつかあります。

シャクヤク

5月に咲く、美しい薬草の花といえば…
シャクヤク(ボタン科)もはずせない1つです。

シャクヤクは、もともと薬用植物として奈良時代にわが国へもたらされたとされています。その後花の美しさにも注目され、園芸植物としても発展することになりました。
薬用部分は根。生薬名は、植物と同じくシャクヤク(芍薬)です。一般用漢方製剤 294処方中、102処方に配剤される重要度の高い生薬です。
鎮痛、鎮痙などの作用にすぐれ、葛根湯にも配剤されています。こむら返りの特効薬「芍薬甘草湯」は、私めも山歩きのときなどに携行しています。

*芍薬の「芍」の漢字は、正しくは中が「一」の字形を用いますが、ホームページの表示の関係上、「芍」で表示しています。ご諒承ください。


さて、次のお花はこちら…

ムラサキ

ムラサキ(ムラサキ科)の花です。
え、ムラサキって、紫色の花じゃないの?そうなんです。白い、つつましい花が咲きます。

では、ムラサキのどこが紫色なのでしょう?こたえはです。根が鮮やかな赤紫色を呈します。生薬のシコン(紫根)ですね。
シコンは抗炎症作用や傷の回復を助ける作用にすぐれ、華岡青洲の創方した漢方の軟膏、紫雲膏の主要な原料生薬となっています。
ところで、ムラサキ科のことをラテン語でBORAGINACEAE(ボラギナケアエ)といいます。
そうです、痔のお薬として有名なあの製品も、シコンを主成分としていたので、名前の由来になっているんですね。
(現在でも飲み薬タイプにはシコンが使われているとのことです)

その昔、武蔵野の象徴であった野生のムラサキは、とても希少になってしまい、環境省のレッドデータブックで絶滅危惧植物に指定されています。
栽培がなかなか難しい植物で、薬用植物園でも、よりよい適地・方法を求めて試行錯誤中…今年は栽培が上手くいっており、園内数箇所で、元気に花を咲かせています。


ウラルカンゾウ

5月の後半になって咲き始めたのが、カンゾウ(マメ科)の花。写真はウラルカンゾウです。
紫色の、小さな藤の花のような花です(向きが上向きですが)。これを見ると、マメ科であることがよく解ると思います。
これの根、およびストロン(地下を横へ走る茎)が生薬のカンゾウ(甘草)でして、一般用漢方製剤 294処方中、最多の212処方に配剤されている、とても重要度の高い生薬です。消炎作用や、配剤された他の生薬の調和をはかる働きがあります。
カンゾウは、甘草とも書くとおり、生薬をかじると甘味を強く感じます。これは主成分グリチルリチンが甘味を呈するためで、薬用以外にも、さしみ醤油の甘味をつける目的など、食品用としても多く消費されています。
東京都薬用植物園では、本種ウラルカンゾウと、もう少し背が高くてスレンダーなスペインカンゾウの2種の花がみられます。

なお、夏に川の土手や草地でオレンジ色の花を咲かせる「ノカンゾウ」や「ヤブカンゾウ」は、萱草という字を書き、まったく別の植物です。
発音が同じなのでよく混同されてしまいますけどね。笑

本日ご紹介しましたうち、ケシ・シャクヤクの花は既に過ぎていますので、また来シーズンのお楽しみとなります。
ムラサキやカンゾウの花はまだしばらく見られそうですので、珍しい薬草の花を見に、ぜひお越しいただければ幸いです。

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