漢方豆知識

第108話　『多汗・寝汗』

　中医学では、多汗や寝汗は身体の陰陽バランスの崩れにより引き起こされると考えます。
疲れやすく、少し動いただけで汗が出て、寒暖差や気圧の変化に弱いのは肺衛不固です。身体の一番外側の防御機能が低下して、汗が漏れ出してしまっている状態です。バリア機能を高める漢方処方の玉屏風散で出過ぎる汗を引き締めます。
悪風、身体がスッキリせず、身体の半分や手のひらなどの一部分に汗が出るのは営衛不和といって、体表の防御機能と体内の自律神経の働きがバランスを崩した陰陽失調という状態です。手足の汗や緊張の汗なら、桂枝加竜骨牡蛎湯で自律神経を整えながら汗を緩和します。
寝汗がひどいのは陰虚火旺という状態です。身体の潤い不足によるオーバーヒートの汗です。午後の熱感、ほてりやドキドキ、口の渇きが現れることもあります。味麦地黄丸や亀鹿仙で潤いチャージして汗の漏れ出しを予防します。
ベタベタ粘っこい汗は湿熱の汗です。竜胆泻肝湯で汗やニオイの元をスッキリ排出します。

令和5年9月15日　足立よみうり掲載