漢方豆知識

第96話　『認知症と漢方薬④「肝鬱」』

　漢方（中医学）では、認知症の主な原因には、まず
①脳の血行不良である「瘀血（おけつ）」と
②老化が加速した状態の「腎虚（じんきょ）」があると考えます。
そして、
③「脾気虚（ひききょ）」や
④「肝鬱（かんうつ）」があると瘀血や腎虚を悪化させ、更に他の症状も引き起こしやすくなると考えます。
　肝鬱は、過労・加齢・ストレスなどにより、気の巡りが悪くなり、気持ちの落ち込みやイライラ、癇癪、暴言、不眠、ゲップやガス、歯ぎしり、食いしばり、貧乏揺すりや体の揺れ、引きつりやピクつきなどが現れてくる症状です。
　この肝鬱による気の滞りは、気血の流れの低下を招き、活発で正常な脳の活動を妨げ、精神状態を不安定にします。
　もともと肝の高ぶりに使用されている漢方処方の抑肝散（よくかんさん）は、近年は認知症による精神症状や攻撃的言動の抑制に期待できるとして利用されています。介護をされるご家族にとっても、助けになるのではないでしょうか。


令和4年9月16日　足立よみうり掲載