創業明治三十九年 仁生堂薬局 東京千住
2017-07-03

第29回 夏至の野に咲く

2017年の半分が過ぎました。
先週は、夏至でした。

夏至の直後6月24日に、聖ヨハネの日というキリスト教の祝日があります。
この名前を冠するヨーロッパ産の薬用植物があります。

多摩川付近のコゴメバオトギリ(別の日に撮影)

そう、セントジョーンズワートです。SJWとも略されます。開花の最盛期がちょうど6月のその頃ということからそう呼ばれます。

SJWは、オトギリソウ科の多年草。和名をセイヨウオトギリソウといいます。
その変種として、葉っぱが細小なタイプが、近年日本の都市部を中心に帰化、野生化していて、これまた6月に花を咲かせます。
こちらはコゴメバオトギリ(小米葉弟切)という和名をあたえられています。花は基本種と同じで、同様にセントジョーンズワートとして用いることができます。
昨年7月の東京薬草散歩(多摩川編)でもご紹介しました。

さて今年の夏至直後、都下に野生化したSJW(コゴメバオトギリ)を訪ねる散歩イベントを企画しましたところ、植物療法やアロマテラピーを研究されている専門家の方々に、多数のご参加をいただき、濃い話をしながら初夏の郊外を散策しました。

花弁に並ぶ暗点

遠目にはふつうの黄色い花。しかし本種の花は黄色一色ではなく、花弁の縁に沿って黒っぽい暗点とよばれる微小な油室が並んでいます。
ここに、暗赤色の色素ヒペリシンが貯留されています。指で花弁をこそぐと、指先が暗赤色~紫色に染まります。
ヒペリシンは分子中に二重結合がたくさん含まれており、いかにも可視光線のエネルギーを吸収しそうな構造をしています。実際、色がついているということは、そういうことですね。

葉には明点とよばれる色のない油室も散らばっており、葉を陽光に透かすと、細かい穴あきのように見えます。

さて、野生の植物の採取については勿論慎重であるべきですが、本種は外来植物であり、日本の環境で増えすぎるのは喜ばしくありません。
私有地等でない場所で、既存の植物にダメージのないように配慮を持って若干量を集め、成分の特性や利用の可能性をさぐってみることとしました。
野生化するほどですから栽培は容易で、きちんと利用するためには栽培管理すると良いのでしょう。もちろん栽培からの逸出には気をつけないといけません…

イベントへ同行いただいたハーブの専門家のかたは、昨年6月にフランスでセントジョーンズワートの花の摘み取りをなさったとのこと。その花が日本にもあるということに大いに感激されていました。

試作したオイルとチンキ

当方も試験用に若干量のツボミと花を頂戴し、30ccほどのオリーブオイルに漬けたSJWオイルと、ウオッカに漬けたSJWチンキを試作。
チンキのほうはすぐに真っ赤になりました。まるで食べるラー油です…。ヒペリシンはアルコールに溶けやすいことが解ります。
油のほうは、さほど着色していません。しばらく陽のあたる場所に置くと出てくるという記載もありますね。

セントジョーンズワートは、ドイツではうつ症状等への適用があるとのことで、日本でも健康食品としての流通が相当量あります。しかし副作用の事例が知られており注意の必要な薬草でもあります。代謝酵素誘導作用により、同時に服用する薬の作用が過剰になったり減弱したり、ヒペリシンの光増感作用による光過敏症などが起きることがあります。
試すときは、専門家のアドバイスも受けながら、じゅうぶん気をつけたいところです。

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