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東京薬草散歩

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2017-03-29

第26回 君は春の足音を聞いたか

今回は、ひとつの春植物にフィーチャーしてお送りしたいと思います。
ちょうど2年前、当コーナーの第1回では、東京都薬用植物園の植物を紹介しまして、その中でちょこっとご紹介しました、あの春の花。

カタクリ(ユリ科)咲きました!

今年も、春の使者、カタクリの季節がやってきました。
雑木林の樹々が葉を茂らせるまでの、林床が明るく暖かいときに、つかの間現れるスプリング・エフェメラル(春の妖精)の代表格です。
特に薬草というわけではありませんが、この季節を語る上で最適の花です。

薬用植物園の入口まで駅から2分、そこから一番奥の雑木林までは歩いて3-4分ほどです。
駅からすぐの住宅地の中に存続する武蔵野の風景です。(むこうにマンションがみえますね)。

カタクリの花は、日差しが入り、気温が上がると開きます。
薄日くらいでも開きます。
しかし、ドンヨリ曇りや雨のときは、閉じたまま。

雨の日のようす

たとえばこちらが、雨の日のカタクリ。下を向いてしっかり閉じています。
カタクリのおしべ・めしべは花から大きく出ているので、大事な花粉が流れてしまわないようにしているのでしょうね。


カタクリの花の真ん中には、おもしろい模様があります。W(M)字のような形で、花の中心部の蜜のありかを虫たちに教える蜜標(みつひょう)という模様です。
この文字のバランスが、個体ごとに違っていて、いろいろ見て回るとおもしろいですよ。

虫をいざなう模様

ところでこの個体は、黄色い花粉を出していますね。
標準的なカタクリの花粉は紫色なんです。こんなところに個性を見出すのも観察の楽しさです。

カタクリには、地下20cmほどのところに球根(植物学的には鱗茎:りんけいといいます)があります。サイズはラッキョウほど。
ここにデンプンが蓄えられていて、かつてはここから「片栗粉」をつくりました。現在はジャガイモ澱粉ですね。

カタクリのもうひとつの魅力が、不思議な模様のある葉っぱだと思います。
開花する個体は葉が2枚(まれに、小さい3枚目がつく場合あり)、まだ開花しないで栄養蓄え中の個体は大きめの葉を1枚出します。
葉っぱは、概ね2月の末から3月の頭にかけて地上に姿を見せるのですが、どうも、葉っぱ1枚の、咲かない個体のほうが、1週間ほど早く現れる傾向があることに、ここ2-3年の観察で気づいた次第。

カタクリのこどもたち

理由はよくわかりませんが、咲くだけの栄養がないうちは、多少の寒さを冒してでも、少しでも多く光合成するために、早くに出てくるのかな~、なんて思います。

どうでしょう。1円玉と見比べてみてください。小さな葉っぱがひしめいています。小さいけれど、いっちょまえに模様が出ています。
これみんな、発芽後おそらく2~4年目くらいのカタクリの幼苗です。種子から開花まで7-8年といわれますね。

カタクリの球根は分球せず、繁殖はもっぱら種子によります。種子にはアリの好む部分(エライオソーム)がついており、アリに運ばれ、アリの歩みでゆっくり分布を広げます。

種子繁殖ならば、色違いの出現もありうる話です。
まれにある白花のカタクリ、いつの日か、薬用植物園の群落に現れることを期待しています。

それでは、また!

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