創業明治三十九年 仁生堂薬局 東京千住
2017-04-29

第27回 川べりのハーブや薬草・春♪

ここは春本番の多摩川べりです。

いま、遠目に最も目につくのは野生化した菜の花(セイヨウアブラナや、セイヨウカラシナ)です。
でも足許に着目すると、ほら、いろんな姿の植物たちが!
今回は、そんな色や形が目を引く薬草とか有用植物たちをご紹介。


地上の銀河、ノヂシャ

青い細かな星のような、銀河のような花が群れ咲いています。
これはノヂシャ(オミナエシ科)。ヨーロッパ原産の帰化植物で、確かに色こそ違うけれどオミナエシのような花です。
最近の分類体系ではスイカズラ科ともします。

英名はコーンサラダ。と言っても缶詰のスイートコーンをあしらったサラダ…ではなくて、「穀物畑の青菜」といった意味です。畑の雑草だったのでしょうね。
帰化植物ですから和名は比較的最近に付けられたはずで、もしかするとノヂシャ(野萵苣)は、コーンサラダの和訳だったのかもしれません。
フランス語ではマーシュ(Mache)といい、生食用の野菜として若葉を収穫して利用します。
かくいう私はまだ食べたことがないのです…。写真のように花が咲いた状態では既に美味しくないそうですので、いずれ自家栽培して早春の若葉を食してみたいものです。


「春もみじ」といわれる、出たばかりの若葉たちの色合いも、この時期の注目箇所です。

春の紅葉、アカメガシワ

こちらの赤い葉は、アカメガシワ(トウダイグサ科)の若葉です。
赤の濃さには個体差があります。この写真のは、すごく赤いです。一昨年5月の中野編でご紹介しましたが、その時のよりも赤いですね。
赤いのの正体は、星状毛という、取れやすい毛です。指で強くこすると剥がれます(写真円内)。
樹皮を、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの薬に用います。生薬名は、植物名と同じくアカメガシワ。

アカメガシワは、いわゆる「パイオニア植物」。日当たりの良い、まだ他の樹がいない場所へ雑草的に生えてきます。土壌は痩せていても平気のようです。
ですので、造成した法面とか、駐車場とかに雑然と生えているのをご覧になった方も多いと思います。とりわけ、河原は彼らのパラダイス!


地面ぴったり、クサボケの花

土手の上のサイクリングロード脇。地面に落ちているかのようなオレンジ色の花たち。
クサボケ(バラ科)です。
草ボケという名ではありますけど、樹木ですよこれ。
盆栽で時折みかけるオレンジの花の「長寿梅」は、ウメではなくてクサボケの品種です。

秋に5cmほどのゴツゴツな黄緑色の果実ができ、これを薬用とします。
焼酎に漬けて果実酒としたり、、煎じたりして、整腸、疲労回復などに役立てています。生薬名はワモッカ(和木瓜)。
シドミ、ジナシ(地梨)、ノボケ(野木瓜)、コボケ(小木瓜)など、別名あるいは地域名がいろいろあります。


土星フラワー、ヘラオオバコ

不思議な形の花がみえてきました。
これはヘラオオバコ(オオバコ科)という帰化植物の花序です。
ヨーロッパの民間薬として、ハーブティーを咳止め、消炎などに役立てているそうです。
昨年3月の荒川編でご紹介しました。このときは未開花だったので「土星のような花」と文章だけでご紹介しましたが、このたび「土星の花」を撮影できたので、あらためて掲載!
花序のうち、いま咲いているところの雄しべがリング状に広がるのです。このリングは花序の咲き進みに従って、徐々に上昇していきます。

自然観察に良い季節となりました。皆様も、お近くの野草を愛でるお散歩はいかがでしょう?
それではまた!!

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