2016-11-10
2017-01-30
2016-12-14
今月、三浦半島の海辺へ行ってまいりましたので、そこで観られた薬草たちをご紹介いたします。
海辺出身の植物って、意外と造園や園芸などで活躍しています。潮風への耐性ゆえに大気汚染にも強く、場所柄、乾燥にも強く、強風や潮風でダメージを受けても復活できるように強い萌芽力を備えているので剪定にも強く、庭木や生垣、公園樹などに適しています。
薬用になるものも、何種類もあります。私達の健康に、海辺の植物のもつ強健な生命力が役立ってくれるのですね。
初冬の海辺、イソギクの黄色い花が咲きあふれる中、力強く活きる薬草のようすを御覧ください。
こちらはツワブキ(キク科)。庭園・公園の植え込みなどでもおなじみの植物ですね。
ことし2月に掲載した「小石川後楽園」で、植栽のツワブキを紹介させていただきました。
写真は野生のツワブキです。よく斑入りが重宝される園芸品と違って、緑一色の葉っぱ。逞しいです。
この株は花が終わっておりますので、花の写真を別添しておきました。秋から初冬の花の乏しい季節に、明るい黄色の花を咲かせるのも好ましいですね。
ツワブキの葉っぱは生薬です。生薬名はタクゴ(稾吾)。民間薬として、葉をあぶってヤケドやキズの手当に使いました。
稾吾…難しい漢字ですね。端末によっては出ないかもしれませんので、画像に埋め込んでおきました。
本文が文字化けしてたらゴメンナサイ…
お次は、なにやら低く這う茎の写真…。
ハマゴウ(クマツヅラ科)。観光地化されていない海岸に生えています。茎と果実ばっかりですね。Wikipediaでは常緑低木と書いてありますが、どうみても落葉しています(笑)。完全落葉ではなく、茎の先端近くの葉は、冬越しすると思われます。
最近のAPG分類体系ではシソ科に分類されます。
果実は生薬であり、名前はマンケイシ(蔓荊子)。カンフェン、β-ピネン、リモネン等の精油成分を含んでいて、ユーカリにも似たすてきな香りがいたします。
鎮痛、解熱などの作用があり、漢方処方(蔓荊子散など)にも配剤されています。
図鑑では「砂浜に生える」とよく書かれているけれど、磯浜にも生えますね。岩のスキマにわずかに溜まった土壌にしっかり根を下ろして、頑強に陣地を広げています。
写真では花の様子が伺えませぬので、花の写真を添えました。花は7月・8月頃によく咲きます。青紫色の涼し気な花です。
ハマゴウの花いっぱいの季節にも、この海岸を訪れてみたいですね…真夏の三浦の海…暑そうだな(笑)
こちらはボタンボウフウ(セリ科)。
長命草の名で、青汁や健康食品として売り出されて、名前(だけ?)はだいぶ有名になっておりますね。
「幻の健康野菜」なんて触れ込みも耳にしますけど、関東から西の自然の多い海岸へ行けば、割と生えています。
けっこう、クセの強い味です。セロリをもっと強くしたような香味。しかも硬い…(笑)
中心部の若葉は比較的柔らかいので、それを超細切りにして刺身のツマにする、などの薬味的な使い方ですと食べやすいようです。あとは天ぷらでしょうかね。
海辺の健康野菜というとアシタバが有名ですけど、アシタバはもろ海辺というよりは、「海に近い山の斜面」に多く自生します。
対してこちらボタンボウフウは、もろ海辺の岩などに張り付くように生えています。
海辺にみられる大型のセリ科植物として、ほかにハマウドというのもあります。これら3種の関係は…
海からの距離
ボタンボウフウ < ハマウド < アシタバ
葉っぱの硬さ
ボタンボウフウ > ハマウド > アシタバ
こんな法則が成り立つように思われます。
おしまいの植物はツルナ(ツルナ科)です。環太平洋に広く分布する多年草です。
科の名前は、本稿ではツルナ科としましたが、ハマミズナ科と書いてある本も多くあります。
これは、APG体系etcで科の分類が変わったのではなくて、同じ科のグループを指しています。グループのどのメンバーを代表名に採用したかでネーミングが違う、という現象が起きています。
かつて、ヘンルーダ科と呼んでいた科がありました。ミカン科のことです。ラテン名Rutaceaeを直訳してたわけです。ヘンルーダ(ルー)、今でこそハーブガーデンで見るようになりましたけど、日本では馴染みの薄い植物だったので、わが国では、おなじみのミカンを科の名前にしたのですね。
さて、ツルナの話に戻りますと…見た目ホウレンソウっぽいですね(科は違います)。英名は「ニュージーランド・スピナッチ」。ホウレンソウなどと同じように、ゆでてアク抜きをし、緑黄色野菜として食用になります。
生薬名としてバンキョウ(蕃杏)という名もあります。全草を用い、胃潰瘍・胃酸過多などに煎じて用いることがあります。
冒頭の「ゆるゆる野草散歩」にご興味のかたは、弊社みどり情報技術の「お問合せ」ページに記載のメールアドレスへご連絡いただければと存じます。
以上、2016年の東京薬草散歩でございました。
来年も、引き続き、どうぞ宜しくお願いします。
では皆様、良いお年を!
第23回 海辺の薬草(三浦半島にて)
最近、植物愛好の皆様と「ゆるゆる野草散歩」と題して、植物観察会を不定期に企画しております。今月、三浦半島の海辺へ行ってまいりましたので、そこで観られた薬草たちをご紹介いたします。
海辺出身の植物って、意外と造園や園芸などで活躍しています。潮風への耐性ゆえに大気汚染にも強く、場所柄、乾燥にも強く、強風や潮風でダメージを受けても復活できるように強い萌芽力を備えているので剪定にも強く、庭木や生垣、公園樹などに適しています。
薬用になるものも、何種類もあります。私達の健康に、海辺の植物のもつ強健な生命力が役立ってくれるのですね。
初冬の海辺、イソギクの黄色い花が咲きあふれる中、力強く活きる薬草のようすを御覧ください。
こちらはツワブキ(キク科)。庭園・公園の植え込みなどでもおなじみの植物ですね。
ことし2月に掲載した「小石川後楽園」で、植栽のツワブキを紹介させていただきました。
写真は野生のツワブキです。よく斑入りが重宝される園芸品と違って、緑一色の葉っぱ。逞しいです。
この株は花が終わっておりますので、花の写真を別添しておきました。秋から初冬の花の乏しい季節に、明るい黄色の花を咲かせるのも好ましいですね。
ツワブキの葉っぱは生薬です。生薬名はタクゴ(稾吾)。民間薬として、葉をあぶってヤケドやキズの手当に使いました。
稾吾…難しい漢字ですね。端末によっては出ないかもしれませんので、画像に埋め込んでおきました。
本文が文字化けしてたらゴメンナサイ…
お次は、なにやら低く這う茎の写真…。
ハマゴウ(クマツヅラ科)。観光地化されていない海岸に生えています。茎と果実ばっかりですね。Wikipediaでは常緑低木と書いてありますが、どうみても落葉しています(笑)。完全落葉ではなく、茎の先端近くの葉は、冬越しすると思われます。
最近のAPG分類体系ではシソ科に分類されます。
果実は生薬であり、名前はマンケイシ(蔓荊子)。カンフェン、β-ピネン、リモネン等の精油成分を含んでいて、ユーカリにも似たすてきな香りがいたします。
鎮痛、解熱などの作用があり、漢方処方(蔓荊子散など)にも配剤されています。
図鑑では「砂浜に生える」とよく書かれているけれど、磯浜にも生えますね。岩のスキマにわずかに溜まった土壌にしっかり根を下ろして、頑強に陣地を広げています。
写真では花の様子が伺えませぬので、花の写真を添えました。花は7月・8月頃によく咲きます。青紫色の涼し気な花です。
ハマゴウの花いっぱいの季節にも、この海岸を訪れてみたいですね…真夏の三浦の海…暑そうだな(笑)
こちらはボタンボウフウ(セリ科)。
長命草の名で、青汁や健康食品として売り出されて、名前(だけ?)はだいぶ有名になっておりますね。
「幻の健康野菜」なんて触れ込みも耳にしますけど、関東から西の自然の多い海岸へ行けば、割と生えています。
けっこう、クセの強い味です。セロリをもっと強くしたような香味。しかも硬い…(笑)
中心部の若葉は比較的柔らかいので、それを超細切りにして刺身のツマにする、などの薬味的な使い方ですと食べやすいようです。あとは天ぷらでしょうかね。
海辺の健康野菜というとアシタバが有名ですけど、アシタバはもろ海辺というよりは、「海に近い山の斜面」に多く自生します。
対してこちらボタンボウフウは、もろ海辺の岩などに張り付くように生えています。
海辺にみられる大型のセリ科植物として、ほかにハマウドというのもあります。これら3種の関係は…
海からの距離
ボタンボウフウ < ハマウド < アシタバ
葉っぱの硬さ
ボタンボウフウ > ハマウド > アシタバ
こんな法則が成り立つように思われます。
おしまいの植物はツルナ(ツルナ科)です。環太平洋に広く分布する多年草です。
科の名前は、本稿ではツルナ科としましたが、ハマミズナ科と書いてある本も多くあります。
これは、APG体系etcで科の分類が変わったのではなくて、同じ科のグループを指しています。グループのどのメンバーを代表名に採用したかでネーミングが違う、という現象が起きています。
かつて、ヘンルーダ科と呼んでいた科がありました。ミカン科のことです。ラテン名Rutaceaeを直訳してたわけです。ヘンルーダ(ルー)、今でこそハーブガーデンで見るようになりましたけど、日本では馴染みの薄い植物だったので、わが国では、おなじみのミカンを科の名前にしたのですね。
さて、ツルナの話に戻りますと…見た目ホウレンソウっぽいですね(科は違います)。英名は「ニュージーランド・スピナッチ」。ホウレンソウなどと同じように、ゆでてアク抜きをし、緑黄色野菜として食用になります。
生薬名としてバンキョウ(蕃杏)という名もあります。全草を用い、胃潰瘍・胃酸過多などに煎じて用いることがあります。
冒頭の「ゆるゆる野草散歩」にご興味のかたは、弊社みどり情報技術の「お問合せ」ページに記載のメールアドレスへご連絡いただければと存じます。
以上、2016年の東京薬草散歩でございました。
来年も、引き続き、どうぞ宜しくお願いします。
では皆様、良いお年を!
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