創業明治三十九年 仁生堂薬局 東京千住
2016-10-15

第21回 秋田の薬草

10月上旬に、生薬に関する秋田研修・見学会に行ってまいりました。
直前に本州横断した台風の影響も、幸いほとんど無く、天候にもかなり恵まれました。

秋田北部、八峰町(はっぽうちょう)の生薬栽培地と山野の自生植物を、2日間にわたり、めいっぱい見てきました。
東京からは離れておりますが、そのすばらしい植物たちの様子をご紹介いたします。

秋田の植物たちを、一言であらわすと
「デカい」
のです。
チゴユリ、アキノキリンソウ、オオカメノキなどなど、関東のものよりも軒並み大型です。
畑のカタバミまでも、ひとまわり大きい花をつけていました。

キクバオウレン

さて、薬草散歩、最初の写真は、山でみつけたキクバオウレン(キンポウゲ科)。
オウレン(黄連)は、黄連解毒湯などに配剤されている、重要な生薬ですね。
日本海側には1回三出複葉のキクバオウレンが、太平洋側には2回三出複葉のセリバオウレンが主に分布します。(例外もある模様)
いずれにしても、同じオウレン(Coptis japonica)の変種の関係ですから、薬用にはどちらも使用可能です。
薬用部分は地中にある根茎です。
こういう重要生薬の薬草が山に生えているというのは、やはり秋田の植物資源の可能性を感じます!

2番めはトチバニンジン(ウコギ科)です。
生薬名はチクセツニンジン(竹節人参)、あるいはチクジン(竹参)。

トチバニンジン

日本にはオタネニンジンの自生はありませんが、同属のこちらが山に自生しています。地上部の見た目はよく似ております。
根茎を、去痰、解熱、健胃薬として、また育毛剤に用いられています。
果実が1粒だけ残っていました!赤と黒のツートンカラーです。こういうタイプのトチバニンジンをソウシシヨウニンジン(相思子様人参)ともいいます。
相思子というのはマメ科のトウアズキの種子で、赤と黒の、こんな色合いをしています。
近くには、果実が赤1色の通常型トチバニンジンもありました。果実がついていないと、ソウシシヨウニンジンと通常型の区別は困難でしょう…

トウゲシバ

お次3番目は、ちょっと珍しめ。トウゲシバ(ヒカゲノカズラ科)というシダの仲間です。
学名から、ヒューペルジアとも呼ばれます。
含まれる成分が、認知症の改善に有用である可能性が報告されており、健康食品として徐々に有名になっているようです。

最後は、八峰町にて栽培中のキキョウ(桔梗)の畑の様子です。
ちらほら花が咲いております。ただし、薬用部分である根の充実をはかるため、花を摘んでしまいます。
ある程度、茎を長く切れば、切花としての出荷も可能かも。もっとも、生育効率的には、花首から摘むのが最も良いのでしょうね。

キキョウとカミツレの畑

キキョウの花弁、ほんのり甘いのですよ。
エディブルフラワーになるんじゃないかな?とか思った次第です。

八峰町では、ハーブのカミツレ(ジャーマンカモミール)を生産しています。
のど飴のCMでご存知のかたもいらっしゃることでしょう。奥のほうの空いている場所が、CMにも登場したカミツレ畑のひとつです。
カミツレは、秋蒔き・春咲きの越年草ですので、今は何もありません(笑)。
そろそろ、来年のためのタネまきが行われるので、耕うん・整地してあります。この記事掲載の頃には、もうタネまきされているかも!

東京都外が2回続きましたが、次回はふたたび東京からお送りする予定です。
それではまた!!

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